
私のもっとも好きなアメリカ車は’68ダッジ・チャージャーR/Tである(チャレンジャーではない。念のため)。あのスティーヴ・マックイーン主演の「ブリッド」で悪役グルマとして出てきたやつだ。決してスマートとはいえない田舎くさいクーペボディに不気味なコンシールドヘッドライトが最大級にミスマッチ。リアライトは日産スカイラインみたいな丸4灯である。日本だと茨城だとか栃木あたりの農村が似合いそう。あの「下妻物語」に出てきてもおかしくない(笑)。だがこいつは最強の426HEMIエンジンを積んでいるのである。7000cc、ツインホーレー4バレルキャブ、半球形クロスフローHEMIヘッド、450hpである。これだけでもう何も言うことはない。その動力性能をひけらかすかのようなこれみよがしのスーパーカーの形をしていないのが奥ゆかしくて非常によろしい。まあ、違いのわかる大人の乗るクルマですな。
これに対してヒーロー・マックイーンの乗るのがいかにもというフォード・マスタング。こっちは(おそらく)ウエッジヘッド、シングル4バレルキャブの396だから320hpぐらいだろう。乗用車のシャーシーにカッコつけたクーペボディをのせただけのポニー・カーである。だが、しょせんは勧善懲悪映画だ。426HEMIチャージャーR/Tはマスタングに追っかけられて転倒炎上してしまう。このシーンを見て悔しさに涙したモパー・ファンは数知れない。ちなみに「モパー」とはクライスラーの愛称である。ダッジやプリマスなどのハイパフォーマンスカーを総称して「モパー」というのだ。
前置きが思いっきり長くなったが、フォード・マスタングに「シェルビー・コブラGT500」なるものが出たそうである。「シェルビー」とは有名なマスタングのチューナーだ。活躍したのが60年代だったのだが今でも健在らしい。「コブラ」はマスタングのスペシャルヴァージョンにつく名前。「GT500」は意味不明である。単なるイメージだろう。もっとも60年代のシェルビーにもGT500の名前はあったから、それを単に流用したにすぎないと思う。日本で言えば「スバル・インプレッサ・WRX・STi・5555(正確にはよく知らない。なんとなくそんな名前があったような)」みたいなもんで、とにかくレースなんかのイメージの名前をつけて箔をつけようという戦略である。

最近キャデラックSTSでも採用されたが、このコブラのエンジンもV8、DOHC、スーパーチャージャーである。STSは4.6リッターで450psだったが、このコブラは5.4リッターで450ps。4シーターで普通のモノコックボディだから軽くはないだろう(1800kgぐらいか?)し、C6といい勝負かも?足回りなどはもともと適当設計のものを固めただけだろうからたいしたことはないはずである。専用設計のC6とはこの辺が違う。やっぱりC6が最強?(笑)